多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が「PMOS」に名称変更|新名称の意味と不妊治療への影響
2026年5月、これまで多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれてきた疾患について、新たに「Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome(PMOS)」という名称が国際的な合意によって決定されました。
今回、世界的な医学誌「The Lancet」に、その名称変更に至る経緯と医学的な根拠が報告されました。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、女性の約8人に1人に認められる身近な疾患であり、排卵障害や不妊症の原因となることもあります。今回の名称変更は、生殖医療にとっても重要な動きです。
PCOSからPMOSへ名称変更された理由とは?
これまでのPCOS(Polycystic Ovary Syndrome)という名称には、「多嚢胞性卵巣」という言葉が含まれていました。しかし、この病気は卵巣に病的な嚢胞が多数できる疾患ではありません。また、卵巣だけの異常でもありません。
実際には、インスリン抵抗性、男性ホルモンの過剰、排卵障害など、複数の内分泌・代謝異常が関係しています。
新しいPMOSという名称には、複数のホルモン系の異常を意味する「Polyendocrine」、代謝異常を意味する「Metabolic」、卵巣機能の異常を意味する「Ovarian」という言葉が含まれています。
つまり、PMOSという名称は、従来のPCOSが卵巣だけでなく、全身のホルモンや代謝にも関係する疾患であることを、より正確に表しています。
PMOSという新名称はどのように決定されたのか?
今回の名称変更には、世界56の学術団体や患者団体が関わり、過去の調査も含めて22,000人以上の患者さんや医療従事者の意見が反映されました。
新たに実施された国際調査では14,360人が回答し、2026年2月の最終会議でPMOSという名称が選ばれました。
単に専門家だけで決めたのではなく、患者さん自身の意見を取り入れたことも、今回の名称変更の大きな特徴です。
Table 1 名称変更に参加した医療従事者の専門分野

Table 1では、産婦人科、生殖内分泌、内分泌内科、小児科、皮膚科、心理学、栄養学など、幅広い分野の専門家が参加したことが示されています。
これはPCOSが婦人科だけでなく、全身の健康に関係する疾患であることを反映しています。
Table 2 名称変更に参加した患者さんと医療従事者の背景

Table 2では、患者さんの年齢、診断からの期間、医療従事者の診療経験などがまとめられています。
診断されてから10年以上経過した患者さんも多く参加しており、長年PCOSと向き合ってきた方々の意見も取り入れられています。
Table 3 新しい名称が決定するまでの検討結果

Table 3では、名称を決める際に重視された項目と、それぞれの候補に対する支持率が示されています。
患者さんの86%、医療従事者の70%が、病態を正確に表す新しい名称を支持しました。また、従来のPCOSという略称を残すことよりも、医学的に正確で誤解を招かない名称に変更することが優先されました。
最終的に、複数の内分泌異常、代謝異常、卵巣機能異常を表すPMOSが選ばれています。
PCOS(PMOS)は不妊症だけでなく全身の健康にも関係する
今回の名称変更で重要なのは、PCOSを単なる排卵障害や不妊症として捉えないことです。
PCOSではインスリン抵抗性が高頻度に認められ、糖尿病、脂質異常症、高血圧などのリスクにも関係します。
また、月経不順や不妊だけでなく、皮膚症状や心理的な問題も生じることがあります。
そのため、妊娠を希望する時期だけでなく、長期的な健康管理が必要な疾患として考えることが大切です。
不妊治療においても、排卵障害への対応だけでなく、ホルモンや代謝の状態を含めた総合的な評価が重要となります。
PMOSへの名称変更で診断基準や不妊治療は変わる?
今後は約3年間をかけて新名称への移行が進められ、2028年に予定されている国際診療ガイドラインの改訂にも反映される計画です。
ただし、日本では従来のPCOSという名称が現在も広く使用されており、日本産科婦人科学会としての正式な名称変更への対応は、現時点で確認できていません。
今回の名称変更は、病気そのものが変わったという意味ではありません。また、診断基準や治療方法が直ちに変更されるわけでもありません。
大切なのは、PCOSが卵巣だけの病気ではなく、全身のホルモンや代謝に関係する疾患であることを、医療従事者も患者さんも正しく理解することです。
まとめ|PCOSからPMOSへの名称変更が示すこと
排卵障害や不妊の治療とともに、将来の糖尿病や心血管疾患などのリスクも考慮した診療が必要です。
今回のPMOSへの名称変更は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を卵巣だけの疾患としてではなく、全身の健康に関わる疾患として理解し、長期的な視点で診療することの重要性を改めて示したものだと思います。
参考文献
Helena J. Teede, Mahnaz Bahri Khomami, Rachel Morman, et al. Polyendocrine metabolic ovarian syndrome, the new name for polycystic ovary syndrome: a multistep global consensus process. The Lancet. 2026;407:2329–2339. Published online May 12, 2026. doi:10.1016/S0140-6736(26)00717-8.
可能性がございます。
お電話受付終了時間 月~金 18:30/土曜 17:30/祝日 13:30