顕微授精(ICSI)
顕微授精とは
顕微授精(ICSI)は、培養士が高倍率の顕微鏡下に形が良く動きが良い精子を1個選び細い針で卵内に入れることを言います。受精率は体外受精よりも高くより確実に受精卵を作る事が可能になります。その一方ヒトが精子を選別するという倫理的な問題があります。
なお、顕微授精には適応というものがあり日本産婦人科学会から見解として出されています。
「体外受精/顕微授精・胚移植に関する見解」日本産婦人科学会
以下一部抜粋します。
顕微授精は,原則として,男性不妊や受精障害など,これ以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断されるものを対象とする.
つまり顕微授精は誰にでも行って良い方法ではないという事になります。
顕微授精の種類
顕微授精には2種類の方法があり、一般的に行われている従来型の方法と、ピエゾICSIの2種類です。
この2つの方法の違いは卵細胞膜の破り方にあります。
ピエゾICSIについて
演題:Piezo-ICSIによる受精と胚発生(演題番号O-55)
目的
Piezo-ICSIはマウスや牛に広く用いられている。最近ヒト不妊治療においてもPiezo-ICSIによる顕微授精胞がとり入られつつある。本研究では当院におけるPiezo-ICSIによる受精と胚発生を従来の方法である吸引圧によって卵細胞膜を穿破するConventional-ICSIと比較検討した。
対象および方法
自然周期もしくはクロミフェン-rFSH-GnRHa周期による採卵を行いICSIを施行した。Piezo-ICSI群176症例、226周期をPiezo群として,Conventional-ICSI群145症例、179周期を従来群として、この2群の受精率、良好胚盤胞発生率を比較した。
結果
クラミジア感染症や子宮内膜症が原因となり、卵管が閉塞している状態
従来群、ピエゾ群における正常受精率はそれぞれ73.5%、82.9%となり、Piezo群で有意に高くなった。また異常受精率はそれぞれ10.6%、5.4%となりPiezo群で有意に低くなった。良好胚盤胞発生率はそれぞれ32.6%、27.5%となり両群に有意な差は認められなかった。
考察
クラミジア感染症や子宮内膜症が原因となり、卵管が閉塞している状態
Piezo群における正常受精率は従来群と比較して有意に高くなり、また異常受精率は有意に低くなった。Piezo-ICSIはConventional-ICSIと異なり、細胞膜を伸展した後、吸引圧ではなく、Piezoパルスによって細胞膜を破り精子を注入するため、卵細胞膜の穿破時のトラブルは低下し、穿破は容易であった。さらに良好胚盤胞発生率は両群に差がなかった。このことよりPiezo-ICSIはConventional-ICSIと比較して同等もしくは上回る技術である事が示唆された。
この結果から言える事として、ピエゾICSIは今後ヒトにおいても有効な顕微授精の方法になる可能性があると言えます。今後の更なる検討を待ちたいところです。
可能性がございます。
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