不妊治療の胚移植 着床率を上げるためにはどうしたらいいの?
子宮の前傾が自然と緩やかになる
カテーテルがスムーズに入りやすくなる
エコー画像が鮮明になり、胚を正確に配置できる
移植後は過度な安静は不要。日常生活の多くは通常どおりでOK
移植前は「膀胱を適度に膨らませる」ことが重要
胚移植は医師の技量が問われる繊細な手技
ストレスの軽減(とくに“笑い”)が妊娠率を高める可能性も
移植後の過ごし方と、胚移植の質を高めるために知っておきたいこと
体外受精(IVF)における大切なステップの一つが「胚移植」です。
移植を終えた患者さんからは日頃、多くの質問をいただきます。
「どれくらい眠ったほうがいいの?」「性交渉はしていい?」「飛行機に乗っても大丈夫?」——。この記事では、移植後の生活で気を付けるポイントに加え、胚移植の成功率を上げるために患者さん・医師双方ができることをまとめました。
移植後の生活に関するよくある質問
どのくらい安静にすべき?
多くの研究で「移植後に長時間寝ていても妊娠率は変わらない」ことが示されています。
イタリアの研究では、移植後1日中ベッドで横になったグループと20分で帰宅したグループで、妊娠率が同じという結果でした。
一般的には15〜30分の安静で十分と考えられます。移植後にしてはいけないことは?
通常の日常生活はほとんど問題ありません。
長時間の移動、飛行機、温泉、軽い運動、日常的な家事などは問題ないとされています。
ただし、強い衝撃を伴う運動や、重いものを突然持ち上げるような動作は避けましょう。胚移植の成功率を高める“患者さん自身ができること”
移植前はできるだけトイレを我慢する
意外と知られていませんが、これはとても重要なポイントです。
膀胱を適度に充満させることで
といった効果があります。
逆に、子宮が強く前屈していると、カテーテルがつっかえ、移植に時間がかかり、その過程で出血が起こることがあります。
移植時の出血は着床を妨げるため、できる限り避けたいものです。医師側が気を付けるべき胚移植のポイント
胚移植は、IVFのプロセスの中でも妊娠率に最も影響を与える重要な手技です。
私自身、以下の5点を特に意識し、毎回の移植に臨んでいます。① トライアルトランスファーで難症例を事前に把握する
子宮の形や傾きは人それぞれ。
本番で「入らない」という事態を避けるため、事前に練習(トライアル)し、カテーテルの通りを確認します。② 頚管粘液を十分に除去する
粘液が残っていると、胚が粘液に捕まり移植が失敗します。
また、感染の原因にもなるため、丁寧な除去が不可欠です。③ 胚は子宮腔の“中央”へ置く
子宮底から何cmという指標ではなく、子宮腔の真ん中に正確に配置することが最も重要です。
④ できるだけ短時間で移植を終える
胚は温度や光に敏感です。
慎重かつ迅速に移植することが理想です。⑤ ソフトタイプのカテーテルを使用する
柔らかいカテーテルは子宮を傷つけにくく、出血が少ないため妊娠率向上に寄与します。
最近では「見えやすい」カテーテルも登場し、操作性が高まっています。移植後に“笑う”と妊娠率が上がる?
2011年に発表されたユニークな研究があります。
胚移植後、プロのコメディアンによるコントやマジックで“笑い”の時間を設けたところ、妊娠率が36.4%に上昇したというものです(対照群は20.2%)。笑いによってストレスが軽減されたことが結果に影響したと考えられます。
不妊治療は精神的な負担が大きいもの。
ストレスを減らし、気持ちを軽くして臨むことも妊娠に良い影響を与える可能性があります。まとめ
移植は、体外受精の成功を左右する非常に大切な瞬間です。
患者さんと医療者が協力し、最良の環境を整えて臨むことが、妊娠につながる大きな一歩になります。参考
The effect of medical clowning on pregnancy rates after in vitro fertilization and embryo transfer.
Friedler S, Glasser S, Azani L, Freedman LS, Raziel A, Strassburger D, Ron-El R, Lerner-Geva L.
Fertil Steril. 2011 May;95(6):2127-30
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