凍結胚を廃棄できないと悩む方へ|不妊治療の終わりに寄り添う「思いやり移植」という選択肢
不妊治療を終えることになったとき、凍結している胚をどうするかという問題に直面することがあります。
治療を続けている間、胚は患者さんにとってとても大切な存在です。
採卵を行い、受精し、培養を経て凍結された胚には、それまでの治療に費やした時間や、さまざまな思いが重なっています。
そのため、治療を終了することを決めても、
「凍結している胚を廃棄することだけは、どうしても決断できない」
と感じる方がいらっしゃいます。
不妊治療を終えても、気持ちがすぐに整理できるとは限りません
医学的には不妊治療を終了するという判断ができていても、気持ちまで同じように整理できるとは限りません。
特に、長い不妊治療を経て得られた凍結胚について、「廃棄」という選択をすることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
当院では、そのような方のための一つの選択肢として、「思いやり移植(Compassionate transfer)」を行っています。
「思いやり移植」とは
思いやり移植とは、妊娠を目的として行う通常の胚移植とは異なります。
凍結している胚を融解し、妊娠が成立しにくい時期に子宮内へ戻す方法です。
当院では、自然周期の月経6~9日頃を目安として行っています。
凍結胚を廃棄するのではなく、自分の体に戻すという形で治療を終えたいと考える患者さんのための選択肢の一つです。
妊娠する可能性を完全にゼロにはできません
思いやり移植を考えるうえで、非常に大切な点があります。
妊娠が成立しにくい時期を選んで胚移植を行いますが、妊娠する可能性を完全にゼロにすることはできません。
そのため、思いやり移植がどのような方法なのか、また妊娠の可能性が残ることについて十分に理解していただいたうえで行う必要があります。
凍結胚を廃棄するという選択も間違いではありません
当院から積極的に思いやり移植をお勧めしているわけではありません。
凍結胚を廃棄するという選択をされることも、もちろん間違ったことではありません。
不妊治療に対する考え方や、凍結胚に対する思いは、患者さんやご夫婦によって異なります。
どの選択が正しいというものではありません。
一方で、長い不妊治療の末にできた胚だからこそ、
「廃棄という形では治療を終えることができない」
と感じる方がいることも、私たちは大切にしたいと考えています。
不妊治療では「治療をどう終えるか」も大切です
不妊治療では、妊娠率や採卵数、胚のグレードといった医学的な数字だけでは答えを出せないことがあります。
「不妊治療をどのように終えるのか」
ということも、その一つです。
思いやり移植は、すべての方に必要な方法ではありません。
ただ、治療を終了することは決めたものの、残っている凍結胚をどうするか悩み続けている方にとって、このような選択肢もあることを知っていただければと思います。
治療を始めるときだけでなく、治療を終えるときにも、患者さんのお気持ちに寄り添うことが大切だと考えています。

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