AMHが高いと残っている卵子は多い?AMHが低くても妊娠できる?最新研究から解説
不妊治療や妊活で行われるAMH検査は、卵巣予備能を評価する際に広く用いられています。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣の状態を知るための重要な指標ですが、「AMHが高ければ卵子が多く残っている」「AMHが低いと卵子がほとんど残っていない」と考えてよいのでしょうか。
実際には、AMHが卵巣内に残っている原始卵胞の数をどこまで反映しているのかについては、まだ分かっていないことがあります。
今回、医学誌『Human Reproduction』に掲載された最新研究をもとに、AMHと卵子の数との関係について解説します。
AMHと卵巣に残っている卵子の数との関係
今回の研究では、妊孕性温存を行った3~18歳の輸血依存性サラセミアの女児119名を対象に、血液中のAMH値と、実際の卵巣組織に存在する原始卵胞密度との関係を調べています。
対象者の年齢中央値は9歳、AMH中央値は3.1 ng/mlでした。
これらの患者さんは、造血幹細胞移植前の妊孕性温存として卵巣組織凍結を受けました。
その際に得られた卵巣皮質の一部を組織学的に調べ、原始卵胞密度を測定しています。
Figure 1では、実際の卵巣組織が示され、卵巣皮質と髄質を区別しながら原始卵胞を数えています。
血液検査のAMHという間接的な指標ではなく、実際の卵巣組織を観察して比較している点が、この研究の大きな特徴です。
Figure 1 卵巣皮質と原始卵胞密度の評価方法

AMHが高くても原始卵胞が多いとは限らない
結果は非常に興味深いものでした。
AMHと原始卵胞密度との間には、有意な関連が認められませんでした。
一方、年齢が上がるにつれて原始卵胞密度は低下していました。
Figure 3では、この違いが分かりやすく示されています。
年齢と原始卵胞密度には明らかな負の関連があるのに対し、AMHと原始卵胞密度には明確な関連がみられませんでした。
つまり、少なくとも今回の小児・思春期の集団では、AMHが高いからといって、卵巣内に原始卵胞が多く残っているとは言えないことになります。
Figure 3 年齢、AMHと原始卵胞密度との関係

AMHが高いほど回収できる卵子数や成熟率は高い
一方で、AMHが意味のない検査ということではありません。
卵巣組織から未成熟卵子を回収して体外成熟培養を行ったところ、AMHが高いほど回収できた卵子数が多く、成熟率も高いという関連が認められました。
具体的には、AMHが1 ng/ml高くなるごとに、以下の結果が示されました。
- 回収できた卵子数が14%増加
- 体外成熟率が3.5ポイント上昇
Figure 4では、AMHが高くなるにつれて回収卵子数と体外成熟率が上昇する関係が示されています。
Figure 4 AMHと回収卵子数、体外成熟率との関係

AMHは卵子の総数ではなく、発育中の卵胞の状態を反映する指標
Table 3では、年齢、BMI、AMH、FSHなどを同時に考慮した解析結果がまとめられています。
ここでもAMHは、回収卵子数と体外成熟率には有意に関連しましたが、原始卵胞密度とは関連しませんでした。
この結果は、AMHが卵巣に残っているすべての卵子の数を直接示すというより、現在発育している卵胞群の状態を反映する指標であることを示唆しています。
実際、AMHは原始卵胞から分泌されるのではなく、発育途中の前胞状卵胞や小胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌されます。
つまり、AMH検査で分かるのは卵巣に残っている卵子の正確な総数ではなく、卵巣の反応性を推測するための情報ということになります。

AMHが低いと妊娠できない?検査結果の考え方
AMHが低いと言われると、「卵子がもう残っていないのではないか」「妊娠できないのではないか」と不安になる方もいらっしゃると思います。
しかし、AMHが低いことだけで、卵子がほとんど残っていない、あるいは妊娠できないと判断する必要はありません。
AMHは、体外受精における卵巣刺激への反応や、採卵でどの程度の卵子が得られそうかを予測するうえでは非常に有用な指標です。
一方で、AMHの数値だけから卵子の質や妊娠の可能性を正確に判断することはできません。
そのため、不妊治療ではAMH値だけでなく、年齢や超音波検査による胞状卵胞数(AFC)、実際の採卵結果などを合わせて総合的に評価することが大切です。
まとめ|AMHの数値だけで卵子の数や妊娠の可能性を判断しないことが大切
今回の研究は、小児・思春期の輸血依存性サラセミア患者という特殊な集団を対象としているため、その結果を成人の不妊治療患者にそのまま当てはめることはできません。
また、原始卵胞密度も卵巣全体ではなく、限られた組織から測定されているという問題があります。
それでも、「AMH=卵巣に残っている卵子の数」と単純に考えるべきではないことを改めて示した興味深い研究です。
AMHは、採卵でどの程度の卵子が得られそうかを予測するうえでは非常に有用な指標です。
しかし、AMHが低いことだけで「卵子がほとんど残っていない」「妊娠できない」と考える必要はありません。
AMHは卵巣の状態を理解するための一つの指標であり、年齢や超音波による胞状卵胞数など、ほかの情報と合わせて評価することが大切です。
今回の研究は、私たちが日常診療でAMHを患者さんに説明する際にも、とても重要な示唆を与えていると思います。
東京都中央区の両角レディースクリニックでは、AMH検査の結果だけでなく、患者さん一人ひとりの年齢や卵巣の状態を踏まえた不妊治療を大切にしています。
AMHの数値や今後の治療について不安がある方は、診察時にご相談ください。
参考文献
Weie Zhao, Xiaoping Liu, Yingchun Guo, Tingting Li, Haitao Zeng, Cong Fang, Xiaoyan Liang, Yujie Li, Jingjie Li.Associations of anti-Müllerian hormone with primordial follicle density and in vitro maturation outcomes in girls with transfusion-dependent thalassemia undergoing fertility preservation.Human Reproduction. 2026;41(9):1570–1580.doi:10.1093/humrep/deag117
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