自然周期の胚移植はプロゲステロン値で日程を決められる?約2万7千周期の研究から解説
凍結融解胚移植を自然周期で行う場合、排卵日を正確に把握することが重要です。一般的にはLHサージや排卵の確認によって移植日を決定しますが、LHサージを見逃した場合には移植日が決められず、周期を中止することもあります。
今回、医学誌「Fertility and Sterility」に、血中プロゲステロン(P4)の上昇を利用して、自然周期における凍結胚移植の日程を決める新しい方法を検討した研究が掲載されました。
この研究では、米国の複数施設で行われた26,668回の凍結融解胚盤胞単一移植を解析しています。
自然周期における胚移植日の決定方法
Figure 1 自然周期における移植日の決定方法

Figure 1では、3種類の自然周期移植法が比較されています。
新しい方法では、排卵後に血中プロゲステロン(P4)を連日測定し、5ng/mL以上になった日から2日後に胚盤胞を移植します。
従来の自然周期ではLHサージから6日後、修正自然周期ではhCG投与から原則7日後に移植します。
つまり、新しい方法はLHサージの時刻だけに頼らず、排卵後のプロゲステロン上昇を基準に移植日を決めるという考え方です。
排卵後のプロゲステロン(P4)の変化
Figure 2 排卵後のプロゲステロンの変化

Figure 2では、LHサージ後のプロゲステロン(P4)の上昇が示されています。
P4が5ng/mL以上になるのはLHサージから中央値4日後で、胚移植は主に月経周期19〜21日目に行われました。
排卵後のホルモン変化を確認することで、LHサージを正確に捉えられなかった場合にも、凍結胚移植の日程を決められる可能性があります。
4種類の胚移植方法と患者背景の比較
Table 1 4種類の移植方法と患者背景

Table 1では、以下の4種類の胚移植方法が比較されています。
- P4を基準とした自然周期:74周期
- 通常の自然周期:999周期
- 修正自然周期:680周期
- ホルモン補充周期:24,915周期
P4を基準とした自然周期は74周期と少なく、他の群と比較して患者背景や移植回数にも違いがありました。
この点は、研究結果を解釈するうえで重要です。
胚移植方法による妊娠率・出生率の違い
Table 2 移植方法別の妊娠率と出生率

Table 2では、各移植方法における妊娠率と出生率が比較されています。
出生率は以下のとおりでした。
- P4を基準とした自然周期:50.0%
- 通常の自然周期:51.7%
- 修正自然周期:55.6%
- ホルモン補充周期:47.0%
P4を基準とした自然周期と他の移植方法との間には、統計学的に有意な出生率の差は認められませんでした。
一方、通常の自然周期と修正自然周期では、ホルモン補充周期より出生率が高いという関連が認められました。
ただし、これは過去の治療データを解析した後ろ向き研究であり、移植方法そのものによる差と断定することはできません。
プロゲステロン値を基準とした胚移植は有効なのか
今回の研究で重要なのは、血中プロゲステロン(P4)が5ng/mL以上になったことを確認し、その2日後に胚盤胞を移植するという方法でも、従来の自然周期と比較して明らかな成績低下が認められなかったことです。
PGT-Aで染色体数が正常と判定された胚に限定した解析でも、同様の傾向が認められました。
ただし、この方法を実際に使用したのは74周期のみであり、従来法と同等であることが確立されたわけではありません。
また、移植当日から黄体補充も行われているため、P4測定だけで管理した結果ではない点にも注意が必要です。
まとめ|自然周期の胚移植における新たな選択肢
自然周期での凍結胚移植は排卵日の予測が難しく、LHサージを見逃すと移植を中止せざるを得ない場合があります。
しかし、今回の研究は、排卵後のプロゲステロン(P4)の上昇を利用することで、そのような周期でも胚移植を継続できる可能性を示しています。
今後さらに大規模な前向き研究による検証が必要ですが、自然周期における凍結胚移植の日程を決める新しい選択肢として、興味深い結果だと考えられます。
参考文献
Papri Sarkar, Kerry Flannagan, Jerry Wang, Anthony N. Imudia, Shayne M. Plosker.Endogenous progesterone guided timing of natural cycle frozen embryo transfer and reproductive outcomes in a large multicenter cohort in the United States.Fertility and Sterility. 2026;126(4):650–658. October 2026.doi:10.1016/j.fertnstert.2026.07.006.
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