凍結胚の「その後」に寄り添う選択肢|Compassionate transfer(妊娠を目的としない胚移植)とは
体外受精では、治療の過程で複数の胚が作られることがあります。妊娠に使用されなかった胚は凍結保存され、将来の治療のために保管されます。
しかし、ご家族の計画が終了した後に、保存されている胚の取り扱いについて悩まれる患者様も少なくありません。
そんな葛藤を抱える方への一つの選択肢として、近年注目されている「Compassionate transfer(コンパッショネート・トランスファー)」について解説します。
凍結胚の取り扱い、どのような選択肢がある?
一般的に、保存期間が終了した、あるいは使用予定がなくなった凍結胚には、以下のような選択肢があります。
- 研究への提供: 医学の発展のために役立てる
- 胚提供: 他のご夫婦へ提供する
- 廃棄: 医療廃棄物として処分する
- 保存の継続: 期限を更新し、保管を続ける
しかし、「わが子になる可能性があった存在」に対して、これらの選択肢に心理的な抵抗や罪悪感を感じてしまうのは、親としてごく自然な感情です。
「Compassionate transfer(妊娠を目的としない胚移植)」という考え方
こうした心の負担を軽減するために生まれたのが、「Compassionate transfer」です。
これは、通常の胚移植とは異なり、あえて妊娠が成立しにくい時期(排卵前など)に胚を子宮内に戻す方法です。凍結胚を機械的に廃棄するのではなく、お母様の体内に戻すことで、自然な形でその役目を終えさせてあげたいという患者様の意思に基づいた処置です。
当院における実施内容と流れ
当院では、患者様の価値観やお気持ちを尊重し、本処置に対応しております。
実施のタイミング
自然周期で行います。通常、月経開始後6日〜9日頃の子宮内膜が着床に適さない時期を選んで実施します。
処置のプロセス
- 融解:保管されている凍結胚を融解します。
- 移植: 通常の胚移植と同様の手順で、子宮内へ戻します。
- 帰宅:処置後は外来と同様にご帰宅いただけます。
実施のルール
- 1回の移植胚数は最大2個までです。
- 複数の胚が残っている場合は、数回(数周期)に分けて実施します。
- 初期胚(Day3)、胚盤胞(Day5)のいずれも対象となります。
知っておいていただきたいリスクと注意点
本処置を受けるにあたり、以下の点をご理解いただく必要があります。
- 妊娠の可能性: 妊娠しにくい時期を選びますが、医学的に可能性を完全にゼロにすることはできません。ごく稀に妊娠が成立する場合があります。
- 医学的リスク: 子宮内への処置を伴うため、軽微な出血、感染、子宮外妊娠などのリスクが(極めて低い確率ですが)存在します。
- 万一の妊娠時: もし妊娠が成立した場合は、通常の妊娠と同様に適切な医学的管理を行います。
費用について
本処置は「妊娠を目的とした治療」ではないため、自由診療(保険適用外)となります。
| 項目 | 内容 | 費用(税込) |
| 妊娠を目的としない胚移植パック | 凍結胚融解、胚移植手技、診察・処置代 | 66,000円 |
ひとりで悩まずにご相談ください
凍結胚をどうするかという問題に、「正解」はありません。大切なのは、ご夫婦が納得して次のステップへ進めることです。
「どうしても廃棄することに踏み切れない」
「最後は自分の体に戻してあげたい」
そんなお気持ちをお持ちの方は、どうぞお気軽に医師やスタッフまでご相談ください。私たちは、皆様の心の安らぎを第一に考え、最適な選択をお手伝いいたします。
可能性がございます。
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