IVM(体外成熟培養)で生まれた子供の発達は?5歳までの追跡研究から分かった安全性と最新知見
近年、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを抑える不妊治療の選択肢として、「体外成熟培養(IVM)」が再び注目を集めています。
その中でもCAPA-IVMは、採卵した未成熟卵子を一定期間休止状態に保った後に成熟させる新しい培養法であり、従来のIVMよりも卵子の発育能を高めることが期待されています。
しかし、患者様にとって新しい技術である以上、「生まれたお子さんの長期的な発達に影響はないのか」という点は最も気になる重要な課題です。今回は、生殖医学のトップジャーナル『Fertility and Sterility』に掲載された、CAPA-IVMと通常の体外受精(IVF)で生まれた子どもを5歳まで追跡した最新の臨床研究をご紹介します。
研究の概要:CAPA-IVM vs 通常IVFの5年追跡
この研究は、ベトナムで実施されたランダム化比較試験から出生したお子さんを対象としており、以下の2つのグループを5歳まで追跡・比較しています。
- CAPA-IVM群: 89人
- 通常のIVF群: 125人
発育や発達状態の評価には「Ages & Stages Questionnaire(ASQ-3)」を、情緒や行動面の評価には「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)」という信頼性の高い国際的な評価指標が用いられました。
調査結果:運動・言語・社会性などにおける比較
論文内のデータ(Table 1)によると、以下の項目においてCAPA-IVM群と通常のIVF群との間に有意な差は認められませんでした。
- コミュニケーション能力(言語発達)
- 粗大運動(全身の大きな動き)
- 問題解決能力
- 社会性・対人関係
- 情緒や行動面
微細運動(手先などの細かい動き)においてのみ統計学的な差がみられましたが、両群とも中央値は正常範囲内であり、発達遅延を示すものではありません。
また、ASQ-3やSDQで「異常」と判定された子どもの割合にも両群で差はなく、全体としていずれの治療法で生まれたお子さんも正常範囲内で健全に成長していることが示されています。

発達障害や特定の異常についての詳細
専門医による異常例の詳細な評価(Table 2)では、以下の症状が確認されています。
- CAPA-IVM群: 自閉スペクトラム症1例を含む4例
- 通常のIVF群: 脳性麻痺に伴う発達障害1例、自閉スペクトラム症1例
結果として、CAPA-IVMを行ったからといって、特定の疾患や発達障害が増加する傾向は認められませんでした。

論文の結論と今後の展望
本研究の著者らは、「CAPA-IVMで生まれた子どもを5歳まで追跡した初めての報告であり、現時点では通常のIVFと比較して発達や行動面で明らかな問題は認められなかった」と結論づけています。
一方で、今回の研究には以下の注意点や限界も挙げられています。
- 対象人数が限られており、ごく小さな差を検出するには統計学的な限界があること
- 保護者の教育歴や社会経済的背景などの環境要因を十分補正できていないこと
そのため、現時点での安全性は良好と言えますが、今後もさらに長期的な追跡調査が必要とされています。
当院の考え(まとめ)
CAPA-IVMは、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、排卵誘発剤によるOHSSのリスクが高い患者様にとって非常に期待される治療法です。
今回の研究は、新しい生殖医療技術(CAPA-IVM)で生まれたお子さんが、5歳時点において従来法と同等に健康に発達していることを示した大変価値のあるデータです。当院でも最新の科学的根拠(エビデンス)に基づき、安心・安全な不妊治療を提供できるよう努めてまいります。
【論文情報】
Vuong LN, Nguyen MHN, Pham TD, et al.
Development of children born from capacitation in vitro maturation vs. in vitro fertilization: 5-year follow-up of a randomized controlled trial.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):436-438.
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