AMHがゼロでも卵巣は働く?更年期女性406人の研究から分かった卵巣機能の変化
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣予備能を評価するために広く使われているホルモンです。年齢とともに低下し、更年期には測定できなくなることがあります。
AMHがゼロ、あるいは測定限界以下になった場合、「卵巣機能が完全に失われたのではないか」「もう妊娠できないのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃると思います。
これまでは、一度測定できなくなったAMHが再び上昇することは少ないと考えられてきました。
今回、医学誌『Fertility and Sterility』に、更年期女性のAMHと卵巣機能の変化を長期間追跡した研究が掲載されました。
AMHが測定限界以下になった女性406人を調査
今回の研究では、米国の大規模研究SWAN(Study of Women's Health Across the Nation)に参加した女性のうち、AMHが一度測定限界以下となり、その後も繰り返し測定された406人を解析しています。
その結果、220人(54.2%)でAMHが再び検出されました。
さらに、そのうち107人(48.6%)では、女性ホルモンであるエストラジオール(E2)も上昇していました。
この結果から、AMHが一度測定できなくなっても、その後に再び検出される場合があることが分かりました。
AMHが再び検出された女性は54.2%
Figure 1では、406人をAMHとE2の変化によって分類しています。
- AMHとE2の両方が上昇した女性:107人
- AMHだけが再び検出された女性:113人
- どちらも上昇しなかった女性:186人
AMHが一度測定できなくなっても、その後に再び検出されることが決して珍しくないことが分かります。
ただし、今回の研究では非常に微量のAMHまで測定できる高感度検査が使用されています。そのため、一般的なAMH検査でゼロと判定された場合と、同じように解釈できるわけではありません。
AMHが再上昇する女性にはどのような特徴がある?
Table 1では、これら3群の背景が比較されています。
AMHとE2がともに上昇した女性では、AMHが最初に測定限界以下となった年齢が平均48.5歳で、上昇しなかった女性の51.7歳より若い結果でした。
また、BMIが低く、FSH(卵胞刺激ホルモン)も低い傾向が認められました。
一方、最終月経の年齢は3群で大きな違いがありませんでした。
つまり、AMHが一度測定できなくなった時点で、その後の卵巣機能の変化や閉経までの経過を正確に判断できるわけではありません。
AMHの再上昇は卵巣機能の一時的な回復を示す可能性
Figure 2では、最終月経の前後におけるAMH、E2、FSH、インヒビンBの変化が示されています。
AMHとE2が再上昇した女性では、E2の一時的な上昇とFSH上昇の抑制が認められました。
これは、AMHの変化が単なる測定誤差ではなく、卵巣の活動が一時的に再び活発になった可能性を示しています。
Table 2では、AMHとE2が上昇した107人を、AMHの再上昇の程度によって比較しています。
再上昇が大きい女性ほどFSHが低く、E2やインヒビンBが高い傾向が認められました。
AMHの変化が、ほかの卵巣ホルモンの変化とも関連していることが分かります。
AMHがゼロから再上昇すれば妊娠できる?
ここで重要なのは、AMHが再び検出されたことと、妊娠できることは同じではないという点です。
今回の研究は、更年期から閉経にかけてのホルモン変化を調べたものであり、排卵や妊娠、出産の可能性を直接検証した研究ではありません。
また、使用されたのは非常に微量のAMHまで測定できる高感度検査であり、通常の臨床検査と同じように解釈することはできません。
AMHが再び上昇したからといって、卵子の質が改善したことや、妊娠する力が回復したことを意味するものではありません。
一方で、AMHがゼロ、あるいは測定限界以下だからといって、その瞬間に卵巣の活動が完全に停止したと判断することもできません。
AMHの数値だけで卵巣機能や妊娠可能性を判断しないことが大切
今回の研究が示したのは、卵巣機能は閉経に向かって単純に低下するだけではなく、途中で一時的に活動が回復することがあるという点です。
AMHが測定限界以下になったからといって、その瞬間に卵巣の活動が完全に停止したとは限りません。
しかし、それは卵子の質が改善したことや妊娠可能性が回復したことを意味するものではありません。
AMHは卵巣の状態を知るための大切な指標ですが、一度の検査結果だけで卵巣機能が完全に失われたと判断することはできません。
不妊治療や妊娠の可能性を考える際には、AMHの数値だけで判断せず、年齢、月経の状態、超音波所見、FSHやE2などのホルモン検査を総合的に評価することが大切だと思います。
参考文献
Laura M. Bozzuto, Kelly Acharya, Bethelhem Shiferaw, Laura K. Kaizer, Joel S. Finkelstein, Genevieve Neal-Perry, Arun Karlamangla, Anthony Morrison, Nanette Santoro, Mary D. Sammel.Antimüllerian hormone rebound and estradiol changes in the study of women’s health across the nation.Fertility and Sterility. 2026;126(4):714–721.doi:10.1016/j.fertnstert.2026.06.024
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