PGT-Aに関して大切なこと
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、現在も世界的に議論が続いている技術です。
今回の保険診療の対象とならなかったことが示すように、国や学会、厚生労働省も「自信をもって広く推奨する」という段階には至っていません。つまり、確固たるエビデンスが完全に確立しているとは言えない状況にあります。
その背景には、いくつもの課題が存在します。
・バイオプシー(胚生検)による胚へのダメージ
・偽陰性・偽陽性の可能性
・胚の自己修復能力
・モザイク胚の扱い
・長期的な児の予後が十分に解明されていないこと
生殖医療の一流誌においても賛成派・反対派の議論が続いており、結論は出ていません。
『The New England Journal of Medicine』に掲載された論文でも、累積出生率では大きな差がないと報告されています。
さらに近年では、「異常」と診断された胚から健康な双子が誕生したという報告もあります。
こうした事実は、この技術の限界や解釈の難しさを示しています。
PGT-Aの本質を理解する
PGT-Aは「正常胚を作る技術」ではありません。
あくまで、できあがった胚の染色体状態を評価する技術です。
本来、私たちがまず取り組むべきことは、
正常胚ができる確率を高める治療を行うことです。
刺激法、受精方法、培養環境――
これらを徹底的に見直し、施設側が最大限努力することこそが王道であると考えています。
胚の問題として片付けることは簡単です。
しかし、その胚を作る過程に医療側の関与がある以上、
自分たちに改善できる点がないかを問い続けることが専門家の責務だと思います。
私見としてのスタンス
私の個人的な見解として、流産の既往がない方に対してPGT-Aを積極的に勧めることはしていません。
将来的にお子さんに何らかの疾患が生じる可能性は、PGT-Aの有無に関わらずゼロにはなりません。
しかし、もし何かが起こった場合、「PGT-Aをしたからではないか」と自分を責めてしまうのが親心ではないでしょうか。
また、バイオプシーは決して軽い処置ではなく、胚にとっては侵襲的な操作です。
生殖医療の原則は、必要のない技術はできるだけ用いないことだと私は考えています。
それでも、勧めるべき場面がある
一方で、流産を繰り返し、心身ともに限界に達している方には、PGT-Aを強く勧めることがあります。
近年の研究では、
・euploid胚(染色体正常胚)を選択することで流産率を下げられる可能性
・出産率が向上する可能性
が定量的に示されています。
また、PGT-Aによって妊娠した群において、周産期の有害転帰の増加は認められなかったとする報告もあります。
つまり、状況によっては有効な選択肢となり得る技術であることも事実です。
大切なのは「誰に、いつ使うか」
PGT-Aは万能ではありません。
しかし、全否定すべき技術でもありません。
大切なのは、
その方にとって本当に必要かどうかを慎重に見極めること。
我が子をこの手に抱くという夢を叶えるため、
今ある技術を使うべきときも確かにあります。
だからこそ、
過度な期待も、過度な否定もせず、
科学的根拠と個々の状況を踏まえて丁寧に判断していく。
それが、PGT-Aと向き合ううえで最も大切な姿勢だと考えています。
可能性がございます。
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