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院長コラム

なぜ腹腔鏡手術で妊娠につながるのか

INDEX 目次

「移植するのは子宮なのに、なぜ卵管や腹腔内を治す腹腔鏡手術で妊娠につながるのですか?」

これは非常によくいただく質問です。
外来でも説明会でも繰り返し聞かれますし、実は産婦人科医や生殖医療専門医であっても、明確に説明できる人は多くないかもしれません。

正直に申し上げると、私自身にも完全には説明しきれない部分があります。
以前も書きましたが、生殖医療はまだ未解明の領域が非常に多く、全体のごく一部しか理解されていないと感じています。特に「着床」という現象は目に見えない部分がほとんどで、解明されていないことが数多くあります。

それでも、腹腔内には「理由」がある

私は17年以上、腹腔鏡手術に携わり、妊娠に至らない方の腹腔内や卵管内を実際にカメラで観察してきました。

そこには、やはり妊娠を妨げる要因が多く存在します。

・癒着
・慢性的な炎症
・子宮内膜症

こうした異常が明らかに認められるケースは少なくありません。

一方で、目立った異常が見当たらないにもかかわらず、手術後最初の移植で妊娠に至る方も数多くいらっしゃいます。

癒着を丁寧に剥離し、炎症を取り除き、内膜症を焼灼し、腹腔内を大量の生理食塩水で洗浄する。
これら一つひとつの積み重ねが、結果的に着床環境を整えているのではないかと考えています。

子宮だけを見ればよいわけではない

分かりやすく例えてみます。

子宮を「子ども部屋(寝室)」、卵管を「廊下」、腹腔内を「リビング」と考えてみてください。

赤ちゃんを迎えるとき、多くの方は子ども部屋をきれいに整え、ベッドを用意するでしょう。
しかし、廊下やリビングにゴミや汚れが長く放置されていたらどうでしょうか。

寝室は廊下やリビングとつながっています。
家全体の環境が悪ければ、寝室だけ整えても十分とは言えません。

赤ちゃんを迎えるためには、家全体を整える必要があります。

腹腔鏡手術は、それと同じ考え方です。

子宮だけでなく、卵管や腹腔内を含めた骨盤内全体の環境を整えたうえで、移植に臨む。
子宮・卵管・腹腔は決して独立した臓器ではなく、連続した一つの空間です。

「卵管を切除しているから関係ない」は本当か

「卵管を切除しているから腹腔内は関係ないのでは」という声もあります。

しかし、人体は卵管だけでつながっているわけではありません。
細かな血管やリンパ管が全身を結び、炎症性物質やサイトカインは容易に移動します。

腹腔内の炎症環境は、卵管を介さずとも子宮内環境に影響を及ぼす可能性があります。

減点が許されない胚のために

特に高齢の場合、胚はとても繊細です。
わずかなマイナス要因が、着床の可否を左右することがあります。

「どうすれば、この胚を最良の環境で迎えられるか」

そのためにできることを一つずつ積み重ねる。
それが腹腔鏡手術の目的です。

すべてが科学的に解明されているわけではありません。
しかし、実際の臨床経験として、環境を整えた後に妊娠へ至るケースを数多く見てきました。

目に見えない着床の世界だからこそ、
見える部分の環境をできる限り整える。

それが私の考えです。


参考動画もあわせてご覧ください。
https://youtu.be/JG59wWBwx54?si=lE36MrHtOG3OvsCv

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