凍結胚移植は「自然周期」と「ホルモン補充周期」どちらが良い?正常胚移植のデータから見えた流産率の差
現在、体外受精における治療の主流は「凍結胚移植」です。
しかし、移植に向けてどのように子宮内膜を準備するかという「内膜準備法」の選択については、長年議論が続いてきました。
今回は、2026年発行の『Human Reproduction』に掲載された最新のランダム化比較試験(RCT)の結果をもとに、妊娠率・流産率に与える影響について解説します。
1.胚の要因を除外して見えてきた「内膜準備法」の真実
この研究の最大の特徴は、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)により「染色体正常」と確認された胚盤胞のみを移植している点です。
流産の最大の原因は胚の染色体異常ですが、その要因をあらかじめ除外することで、純粋に「内膜準備法そのもの」が妊娠予後にどのような影響を与えるかを評価しています。
これは、不妊治療の質を考える上で極めて価値の高いデータです。
2.自然周期(Natural Cycle)vs ホルモン補充周期(Artificial Cycle)
凍結胚移植には、大きく分けて2つの方法があります。
・自然周期(Natural Cycle-FET)
患者様自身の自然な排卵を利用し、自前のホルモン(黄体)によって内膜を整える方法。
・ホルモン補充周期(Artificial Cycle-FET)
お薬(エストロゲン・プロゲステロン剤)を投与して排卵を抑え、人工的に内膜を作る方法。
日程調整がしやすいため、多くのクリニックで広く採用されています。

しかし、本論文では「ホルモン補充周期」における気になるリスクが示されました。
3.衝撃のデータ:流産率が約2倍の差に
論文内のデータ(Table 3など)によると、両者の成績には明らかな有意差が認められました。
| 評価項目 | 自然周期 | ホルモン補充周期 (人工周期) |
|---|---|---|
| 早期流産率 | 6.7% | 14.2% |
| 臨床妊娠率 | 72.5% | 52.3% |
| 生児獲得率 | 67.4% | 47.2% |
驚くべきことに、ホルモン補充周期では、自然周期に比べて流産率が約2倍に達していました。
さらに、無事に赤ちゃんを授かる「生児獲得率」においても、自然周期の方が圧倒的に高い数値を示しています。

4.なぜ「ホルモン補充周期」だと流産が増えるのか?
著者らが注目しているのは「黄体の欠如」です。
従来、黄体はプロゲステロン(黄体ホルモン)を出すだけの組織と考えられてきました。
しかし近年の研究では、黄体はプロゲステロン以外にも、VEGF(血管内皮増殖因子)やリラキシンといった、妊娠初期の血管形成に重要な物質を分泌していることがわかってきています。
つまり、お薬でホルモンを補っていても、「黄体そのもの」が存在しないホルモン補充周期は、自然な妊娠状態とは異なる環境になっている可能性があるのです。
これは、ホルモン補充周期で「妊娠高血圧症候群」や「胎盤異常」のリスクが高まるという近年の報告とも合致する非常に興味深い考察です。
5.「正常胚なら安心」ではない、内膜側の重要性
個人的に非常に重要だと感じるのは、「正常胚を戻しても、内膜準備法次第で結果が左右される」という現実が明確になった点です。
これまで、PGT-A後の流産は「胚以外の漠然とした問題」と片付けられがちでした。
しかし本研究は、移植の方法という具体的な選択が、成功率を大きく左右することを示唆しています。
まとめ:当院の考え方
もちろん、すべての患者様に自然周期が適しているわけではありません。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などで排卵障害がある場合や、卵巣機能が低下している方にとって、ホルモン補充周期は極めて重要な選択肢です。
しかし、「自然排卵が可能な方であれば、できる限り自然周期を優先すべきである」という流れは、今後さらに強まっていくでしょう。
凍結胚移植は、単に「胚を戻す」だけの作業ではありません。
一人ひとりの体の力を最大限に引き出すために、どのように子宮内膜を整えるか。
当院では、最新のエビデンスに基づき、患者様にとって最適な移植プランをご提案してまいります。
【参考文献】
The impact of endometrial preparation on pregnancy loss in vitrified-warmed euploid blastocyst transfer cycles: a randomized controlled trial
Human Reproduction, 2026; Vol.41: 1–8
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