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院長コラム

モザイク胚は本当に危険?タイプ別の妊娠率・流産率の違いを最新論文から解説

モザイク胚は本当に危険?タイプ別の妊娠率・流産率の違いを最新論文から解説
INDEX 目次

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を行うと、「モザイク胚」という結果が出ることがあります。モザイク胚とは、胚の中に正常な細胞と染色体異常を持つ細胞が混在している状態のことです。

これまでモザイク胚は「正常胚に比べて妊娠率が低い」「一律に移植の優先順位が下がる」と考えられがちでした。しかし、実際にはすべてのモザイク胚が同じリスクを持つわけではありません。

今回は、モザイク胚の種類による成績の違いを非常に詳細に解析した、臨床的価値の高い大規模研究(2026年発表の最新論文)をベースに、当院の院長が詳しく解説します。

1.2026年最新研究:434回のモザイク胚移植から見えた事実

今回ご紹介する論文は、434回のモザイク胚移植と868回の正常胚移植を比較した大規模な研究です。

この研究の特に重要な点は、単に「モザイク率(異常細胞の割合)」を見るだけでなく、「どのタイプのモザイクか」を非常に細かく分類して解析している点にあります。

論文内(Figure 1)では、モザイク胚を以下のように分類しています。

・モザイク率による分類: 「低レベルモザイク」と「高レベルモザイク」
・異常の範囲による分類: 「染色体全体の異常」と「部分的な異常(セグメンタルモザイク)」

2.【タイプ別】モザイク胚の妊娠成績と流産率の違い

1. セグメンタルモザイク胚(部分的な異常)

論文のデータ(Figure 2)によると、染色体の一部だけに異常がある「セグメンタルモザイク胚」は、正常胚とほぼ同等の妊娠成績(妊娠率・生産率)を示していました。

2. 染色体全体のモザイク胚

一方で、染色体全体にモザイクが認められる場合は、妊娠率・生産率(生児獲得率)ともに低下が明確に見られました。

3. トリソミーモザイクとモノソミーモザイクの違い

さらに研究(Figure 3)では、染色体全体のモザイクを「トリソミーモザイク(染色体が1本多い)」と「モノソミーモザイク(染色体が1本少ない)」に分けて解析しています。ここが非常に興味深い結果となっています。

◎トリソミーモザイク胚:
最も成績が振るわなかったのがこのタイプです。生児獲得率が大きく低下し、流産率も著明に上昇していました。特に妊娠初期(第一三半期)の流産率は、正常胚の約6倍という非常に大きな差が認められています。

◎モノソミーモザイク胚:
一方で、モノソミーモザイク胚は、正常胚と比べて妊娠成績に大きな差を認めませんでした。

3.なぜモザイクの「タイプ」によって成績が変わるのか?

論文では、この結果の理由について、胚が持つ「異常細胞を排除する能力(自己修復機能)」の観点から考察されています。

実際の動物実験などでも、胚の発育過程において異常細胞がアポトーシス(細胞死)などによって減少し、最終的に正常細胞が優勢になる現象が確認されています。

◎モノソミー細胞
 もともと発育能力が低いため、早期に胚自体から排除されやすい(結果として正常な赤ちゃんとして育ちやすい)可能性があります。

◎トリソミー細胞
 比較的生存しやすく、胎盤や胚の中に残りやすいため、妊娠予後の悪化(流産など)に繋がりやすいのではないかと推測されています。

また、今回の研究では「モザイク率が50%を超える高レベルモザイク」の場合も、妊娠率・生児獲得率ともに大きく低下していました。やはり「異常細胞がどれくらい含まれているか」という割合も重要な指標となります。

4.モザイク胚移植の安全性について

モザイク胚移植を考える患者様にとって、最も気になるのは「生まれてくる赤ちゃんの安全性」ではないでしょうか。

この点に関して、今回の論文では「母体合併症や出生異常率は、正常胚と大きな差を認めなかった」という比較的安心できる結果が示されています。

ただし、著者らも「症例数はまだ十分ではない」としており、完全に安全性が証明されたわけではない点には留意が必要です。

まとめ:モザイク胚を一律に「ダメ」と評価する時代は終わりつつある

この論文の最大の意義は、「モザイク胚を一律に評価する時代は終わりつつある」という点を示したことです。

「モザイク胚だから妊娠できない、危険だ」と単純に諦める必要はありません。今後は、以下を総合的に評価しながら、移植の優先順位を個別に考えていく時代になります。

1.モザイク率(高レベルか低レベルか)
2.染色体全体か、部分的な異常(セグメンタル)か
3.トリソミーかモノソミーか

正常胚が得られない患者様にとって、モザイク胚は非常に重要な選択肢です。「どのモザイク胚なら十分に期待できるのか」を具体的に示した今回の研究は、今後の不妊治療における臨床において、非常に価値が高いものだと感じています。

当院(東京都中央区の両角レディースクリニック)では、こうした最新の知見に基づき、患者様お一人おひとりの胚の状態を詳しく評価し、最適な治療方針をご提案しております。PGT-Aの結果やモザイク胚の移植についてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

出典
Fertility and Sterility
 Impact of different types of embryonic mosaicism on pregnancy outcomes
2026; Vol.125 No.5: 786–796

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