レルミナはリュープリンの代わりになる―腹腔鏡下筋腫核出術前治療の最新RCT

筋腫術前治療を変える直接比較試験
子宮筋腫に対する腹腔鏡下筋腫核出術では、「いかに出血を減らすか」が非常に重要です。
そのため、術前にGnRHアゴニストであるリュープリンを使用し、筋腫や子宮を縮小させてから手術を行う方法は長年広く行われてきました。一方で近年、経口GnRHアンタゴニストであるレルミナ(relugolix)が登場し、「注射ではなく内服で同じ効果が得られるのか」が注目されています。
今回紹介する論文は、腹腔鏡下筋腫核出術前治療として、レルミナとリュープリンを直接比較した日本発のランダム化比較試験です。
この研究では、20歳以上の閉経前女性73名が対象となり、レルミナ群32例、リュープリン群35例が解析されています。ページ4のFigure 1では、患者登録から解析までの流れが図示されています。ページ5のTable 1を見ると、両群の背景はかなり揃っており、平均最大筋腫径は約8cm前後、筋腫個数も平均2個程度でした。
つまり、比較的標準的な腹腔鏡下筋腫核出術症例と言えます。

内服でもここまでできる
この論文で最も重要なのはページ6のTable 2です。
結果として、術中出血量はレルミナ群72.7mL、リュープリン群84.4mLであり、統計学的に「レルミナはリュープリンに対して非劣性」と判定されました。
つまり、「レルミナでも十分出血を抑えられた」という結果です。さらに重要なのは、手術時間、摘出筋腫重量、摘出筋腫数、術後ドレーン量、入院日数など、他の手術成績にも有意差がなかった点です。また、開腹移行例も輸血例もありませんでした。
つまり、「手術のしやすさ」という観点でも、レルミナはリュープリンとほぼ同等レベルだったと言えます。

筋腫・子宮の縮小効果もリュープリンと同等
ページ7のTable 3では、薬剤効果も詳しく解析されています。
子宮体積縮小率はレルミナ群−43.5%、リュープリン群−38.2%であり、筋腫縮小率にも差は認められませんでした。つまり、「筋腫を縮める力」もほぼ同等という結果です。

術後ホルモン回復はレルミナが優位
しかし、この論文で最も臨床的に重要なのは、その先です。
ページ7〜8では、「術後回復」にかなり大きな差が認められています。特に重要なのが、エストラジオール回復速度です。
リュープリン群では、術後4週間でも約20%の患者でE2 <20 pg/mLの低エストロゲン状態が持続していました。一方、レルミナ群では術後4週時点で低エストロゲン状態の患者はいなくなっていました。
つまり、「ホルモン回復がレルミナの方がかなり早かった」ということです。
回復スピードで示されたレルミナの優位性
月経再開も、レルミナ群では約38日、リュープリン群では約53日でした。
これは妊娠を希望する患者さんにとって非常に実践的な差です。さらに、骨密度や脂質代謝についても、レルミナ群では術後回復傾向がより早く認められていました。
つまり、「低エストロゲン状態からの回復が早い」というレルミナの特徴が、骨や脂質代謝にも反映されていた可能性があります。
GnRHアンタゴニストの臨床的優位性
ページ2では、GnRHアゴニストであるリュープリンの問題点についても説明されています。
リュープリンはflare upを起こし、一時的にFSH・LH・E2が上昇します。一方、レルミナはGnRHアンタゴニストであるためflare upがありません。
さらに内服薬であり、通院注射が不要です。この点は実臨床ではかなり大きなメリットです。
特に、若年患者、妊孕性温存希望、早期妊活再開希望などでは、術後ホルモン回復速度は非常に重要です。この論文は、「レルミナは単なる代替薬ではなく、術後回復面ではむしろ優位性がある可能性」を示した点が大きな意義だと思います。
術前治療を変える可能性を示した研究
一方で、著者らは非常に慎重でもあります。
症例数が比較的小さいこと、日本3施設のみであること、二重盲検ではないことなどの限界も述べられています。それでも、この研究はかなり実践的です。
現在、多くの施設で「術前GnRH治療=リュープリン」という流れが残っています。
しかし、このRCTは、「レルミナでも十分代替可能」であり、しかも術後回復面では有利かもしれないことを示しています。特に今後、妊孕性温存やQOL重視の観点から、術前治療の選択肢は大きく変わっていく可能性があると思います。
出典
Fertility and Sterility
The effectiveness of relugolix compared with leuprorelin for preoperative therapy before laparoscopic myomectomy: a randomized controlled noninferiority study (MyLacR study)
2026; Vol.125 No.5: 904–913
まとめ:妊孕性と術後回復を踏まえた治療選択
この論文の意義は、「腹腔鏡下筋腫核出術前治療として、レルミナがリュープリンの実用的な代替になり得る可能性」を、日本発のランダム化比較試験で示した点にあります。
これまで術前GnRH治療といえばリュープリン注射が標準的でしたが、レルミナ内服でも術中出血量、手術時間、筋腫縮小率、入院期間などがほぼ同等であり、「内服でも十分に手術をしやすくできる」ことが示されました。
特に重要なのは、術後のホルモン回復がレルミナの方が早かった点です。
月経再開はレルミナ群で約38日、リュープリン群で約53日であり、術後の低エストロゲン状態からの回復も早い可能性が示されました。これは、妊娠希望患者にとって非常に実践的な意味があります。また、注射通院が不要である点も患者負担軽減につながります。
つまりこの論文は、「単に出血を減らせるか」だけでなく、「術後回復や妊孕性を考えた術前治療選択」という新しい視点を提示したことに大きな価値があります。
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