LINEで初診予約
院長コラム

原因不明の反復流産に感染が隠れている?Mycoplasma(マイコプラズマ)とUreaplasma(ウレアプラズマ)の最新大規模研究

原因不明の反復流産に感染が隠れている?Mycoplasma(マイコプラズマ)とUreaplasma(ウレアプラズマ)の最新大規模研究
INDEX 目次

原因不明の反復流産に隠れた「感染症」の可能性

反復流産(不育症)の患者さんを診療していると、「ひと通りの検査をしても原因が見つからない」というケースに少なくありません。実際、反復流産の約半数は原因不明とされています。

今回ご紹介する論文は、その“原因不明の反復流産”の背景に、Mycoplasma(マイコプラズマ)やUreaplasma(ウレアプラズマ)といった感染症が関与している可能性を示した、非常に興味深い最新の研究です。

1.Mycoplasma・Ureaplasmaとはどんな菌?

まず、これらの菌について簡単にご説明します。

Mycoplasma(マイコプラズマ)/Ureaplasma(ウレアプラズマ)

子宮頸部や腟、男性では尿道などに存在することがある非常に小さな細菌の一種です。性感染症として扱われることもありますが、実際には症状がほとんどないまま存在していることも多く、「自分では全く気づかない」ケースが少なくありません。

通常の細菌と違い「細胞壁を持たない」という特徴があり、そのため一般的な抗生剤が効きにくいことがあります。特にMycoplasma hominisやUreaplasma urealyticumは、生殖器周囲で慢性的な炎症を起こす可能性がある菌として知られています。

近年、不妊症、慢性子宮内膜炎、反復着床不全、そして今回のテーマである反復流産との関連が注目されています。これらの菌が子宮内膜に慢性的な炎症を起こすことで、胚が着床しにくくなったり、妊娠しても流産につながる可能性が考えられているのです。

2.最新データが示す「反復流産患者」と「感染率」のリアル

今回ご紹介する大規模研究(2026年発表)では、1,583人の反復流産患者さんと、263人の不妊コントロール群(比較対象グループ)が比較されています。

論文のデータ(AbstractおよびTable 1)によると、以下のような顕著な差が見られました。

○反復流産群の陽性率:Mycoplasma 4.2% / Ureaplasma 15.7%

○2つの菌の合計陽性率:
 ・反復流産群:19.9%
 ・不妊コントロール群:10.3%

特にMycoplasmaは、コントロール群ではほぼ検出されなかったのに対し、反復流産群では有意に高頻度でした。つまり、「反復流産患者さんでは、これらの感染が約2倍多かった」という結果です。

3.治療(除菌)によって「生児獲得率」は改善するのか?

さらにこの論文で非常に重要なのは、単に「菌がいた」という事実だけでなく、「治療後の妊娠予後(その後の出産率)」まで追跡している点です。ここがこの研究の大きな価値だと言えます。

感染が見つかった患者さんとそのパートナーは、14日間のドキシサイクリン(抗生剤)治療を受け、その後に治癒確認検査(test-of-cure)を行いました。

① 高い除菌率

初回治療後の除菌率は84.4%、追加治療も含めた最終的な除菌率は95%以上でした。つまり、これらの感染症は比較的高率に治療可能だということです。

② 出産率(生児獲得率)の明らかな改善

最も注目すべきは、除菌成功後に妊娠した患者さんの結果です(Table 3)。

グループ出産率(生児獲得率)
Mycoplasma 除菌成功群
78%
Ureaplasma 除菌成功群
76%
培養陰性(もともと菌がいない)の反復流産群
64%

菌を持っていなかった反復流産群の出産率が64%だったのに対し、感染を持っていた患者さんで、除菌に成功した後のほうが予後が良かった(出産率が高かった)という結果が出たのです。

4.「慢性子宮内膜炎(CE)」の診断と原因菌へのアプローチ

論文内では、近年反復流産との関連で注目されている「慢性子宮内膜炎(chronic endometritis: CE)」との関連も詳しく議論されています。

現在、慢性子宮内膜炎の診断にはCD138染色、組織診、子宮鏡、培養検査など様々な方法がありますが、診断基準が世界的に統一されておらず、感度・特異度ともに完全ではないことが大きな問題となっています。

特に広く使われている「CD138染色」は、正常な内膜やポリープ、月経期でも陽性細胞が見られることがあり、過剰診断(本来治療が必要ないケースまで陽性と判定してしまうこと)の問題が指摘されています。

そこで著者らは、「病原体を直接同定して治療する」という考え方を重視しています。

つまり、「CD138が陽性だからとりあえず抗生剤を飲む」のではなく、「どの菌が子宮内に潜んでいるのか」をしっかり確認してピンポイントで治療する方が合理的ではないか、という立場です。症状がほとんどないまま上部生殖路に存在しているMycoplasmaやUreaplasmaは、まさにその狙い撃ちすべきターゲットと言えます。

5.【重要】陽性=すべてが悪者とは限らない

ここで重要な注意点があります。「陽性だからといって、必ずしもそれが100%悪さをしている」とは言い切れないという点です。

実際には、健康で問題なく出産されている方でもこれらの菌を保有していることがあり、「本当に感染して悪影響を及ぼしているのか」それとも「単に体内で共存しているだけなのか」の境界線は、まだ完全には解明されていません。ですから、検査結果だけで過度に悲観する必要はありません。

実際の検査は、子宮頸部の培養やPCR検査によって行われ、治療が必要と判断された場合はドキシサイクリンなどの抗生剤を使うことが多いです。

この研究だけで「Mycoplasmaが反復流産の絶対的な原因である」と断定することはできません(ランダム化試験ではないことや、他の菌の評価、慢性子宮内膜炎自体を直接評価していない等の限界もあります)。しかし、原因不明の反復流産や慢性子宮内膜炎が疑われる場合には、一度検査を考慮する価値が十分にあると考えられています。

まとめ:臨床医としての客観的な視点とこれからの診療

この研究が持つ臨床的な意味は非常に大きいと感じます。これまで「原因不明」とされてきた反復流産や、慢性子宮内膜炎が疑われる方、CD138が陽性でなかなか改善しない患者さんにおいて、一つの明確な選択肢を示してくれているからです。

何より、この検査は比較的簡便であり、治療(抗生剤の服用)も身体への負担が少ない(低侵襲な)ものです。

近年の不妊治療・反復流産診療では、「免疫」の観点だけでなく、「慢性炎症」や「子宮内の微生物環境(フローラ)」が大きなテーマになっています。今回の論文は、その中で「特定の病原体を見つけて治療する」という、非常に具体的かつ希望のある視点を提示してくれた重要な研究と言えるでしょう。

当院でも、患者さんお一人お一人の状況に合わせ、最新の知見に基づいた最適な検査・治療をご提案してまいります。原因が分からず不安な日々を過ごされている方も、どうぞ諦めずにご相談ください。

出典
誌名:Fertility and Sterility
論文名:Recurrent pregnancy loss and the role of Mycoplasma and Ureaplasma: a prospective cohort study with outcome after treatment
巻号・ページ:2026; Vol.125 No.5: 852–859
DOI:10.1016/j.fertnstert.2025.12.015

背景画像 背景画像
当日予約もお取りできる
可能性がございます。
03-5159-1101
 当日枠 月~金 14:00/土曜 12:00/祝日 10:00
お電話受付終了時間 月~金 18:30/土曜 17:30/祝日 13:30