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院長コラム

反復流産患者にPGT-Aは本当に有効なのか―3回のeuploid胚移植後累積生児率96.9%

反復流産患者にPGT-Aは本当に有効なのか―3回のeuploid胚移植後累積生児率96.9%
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反復流産患者さんに対して、「PGT-Aは本当に意味があるのか」という議論は現在も続いています。特に、「流産の原因は胚側なのか、それとも母体側なのか」という問題は、反復流産診療の中心テーマの一つです。

今回紹介する論文は、「euploid胚だけを最大3回移植した場合、反復流産患者でどこまで出産できるのか」を検討した非常に興味深い研究です。 この研究では、中国の2施設で2018年から2024年までにPGT-Aを行った反復流産患者269名が解析されています。

正常胚を用いた反復流産治療の成績

ページ1のStudy Designでは、この研究の重要な特徴が示されています。
まず、モザイク胚移植、重度子宮内癒着、子宮奇形、内膜7mm未満が除外されています。一方で、甲状腺異常や抗リン脂質抗体症候群などは、「適切に治療された状態」で含まれています。

つまり、「治療可能な母体因子を整えた上で、euploid胚だけを移植したらどうなるか」を見た研究です。

最大3回で約97%が出産に到達

ページ1〜2のResultsでは、患者背景が示されています。
平均年齢34.9歳、平均流産回数2.9回でした。約半数が不妊症も合併していました。

この論文で最も重要なのはページ1のReproductive Outcomesです。最初のeuploid単一胚移植での生児率は53.2%でした。2回目は48.6%、3回目は62.5%でした。

そして最大3回までeuploid単一胚移植を行った患者では、累積生児率が96.9%に達していました。これはかなり衝撃的な数字です。

反復流産における胚要因の位置づけ

ページ2のFigure 1は、この論文で最も重要な図です。
ここでは、患者が1回目、2回目、3回目移植を経て、最終的にどれだけ出産へ到達したかが非常にわかりやすく示されています。1回目で143名が出産し、その後さらに36名、さらに10名が出産しています。

つまり、「euploid胚移植を継続すれば、かなり高率に出産へ到達した」ということです。著者らはConclusionで非常に強い表現を使っています。

「この結果は、反復流産の主因が胚の異数性であることを強く支持する」
つまり、「流産の最大原因は胚側であり、正常胚を選別すれば極めて高率に出産できる」という考え方です。これは非常に大きなメッセージです。

反復流産における胚要因説をどう読むか

特に近年、反復流産では、免疫、慢性子宮内膜炎、Th1/Th2、NK細胞など多くの議論があります。しかしこの論文は、「euploid胚を繰り返し移植すれば、最終的にほぼ全員が出産できた」というデータを示しています。

もちろん、この論文には非常に大きな注意点もあります。
ページ2でも著者ら自身が述べていますが、この研究では、子宮奇形除外、高度癒着除外、内膜不良除外が行われています。

つまり、「かなり条件を整えた反復流産患者」を見ているわけです。また、27.5%が途中脱落しています。特に脱落群ではAMHが低く、卵巣機能が悪かったことも示されています。

このデータが患者さんにもたらすもの

つまり、「全例で96.9%出産できる」という意味ではありません。
さらに、後ろ向き研究であり、対照群もありません。したがって、「PGT-Aをすれば全員良くなる」と結論づけることもできません。

それでも、この研究のインパクトはかなり大きいと思います。特に重要なのは、「反復流産患者でも、euploid胚を移植すれば非常に高い出産率に到達し得る」という予後を示した点です。

反復流産患者さんは、「自分はもう妊娠できないのでは」と非常に強い不安を抱えています。その中で、「正常胚が得られれば、かなり高率で出産へ到達できる可能性がある」というデータは、大きな希望になります。

胚か母体か、その二択ではない

一方で、この論文は、「母体因子を整える重要性」も逆説的に示しています。つまり、子宮環境、内膜、内分泌、免疫を整えた上で、euploid胚を移植することが重要ということです。

反復流産診療では、「胚だけ」「母体だけ」と単純化するのではなく、両者をどう最適化するかが重要であることを改めて考えさせられる論文だと思います。

出典
Fertility and Sterility
Cumulative live birth rates after three sequential single euploid blastocyst transfers in patients with recurrent pregnancy loss
2026; Vol.125 No.5: 926–928
doi:10.1016/j.fertnstert.2025.11.021

当院が目指す反復流産診療のかたち

この論文はかなり大切です。特に「反復流産では、正常胚を移植できれば予後はかなり良い可能性がある」という点を示したことに大きな意義があります。この研究では、子宮奇形や高度癒着を除外し、内分泌・免疫異常も治療した上で、euploid胚のみを最大3回移植したところ、累積生児率は96.9%に達していました。

つまり、「母体環境を整えた上で正常染色体胚を移植する」ことの重要性を示した研究です。

当院でも、必要に応じて子宮鏡や腹腔鏡手術を行い、子宮内&腹腔内環境を整えた上で正常胚移植を目指していますが、この論文はその考え方を非常に支持する内容と言えます。

一方で、「PGT-Aだけで全て解決する」という論文ではありません。母体因子を適切に評価・治療した上で正常胚を移植することが、反復流産診療では極めて重要であることを改めて示した論文だと思います。

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