胚盤胞培養なら必ず生まれる確率は上がるのか?BMJ研究から考える治療個別化の重要性
「胚盤胞(Day 5)まで育ててから移植すれば、本当に赤ちゃんが生まれる確率は高くなるのだろうか?」
現在の体外受精(IVF)では、受精卵を5〜6日間培養し、胚盤胞まで発育した胚を移植する方法が広く行われています。
胚盤胞まで培養することで発育能の高い胚を選択できるため、1回の胚移植あたりの妊娠率や生児獲得率は高くなることが知られています。
では、「胚盤胞まで培養することで、最終的に赤ちゃんが生まれる確率そのものも高くなるのか?」
この疑問に対し、2024年に世界的な最高峰の医学雑誌『The BMJ』に大規模なランダム化比較試験(RCT)が報告されました。
『The BMJ』誌に掲載された最新研究データ
この研究では、Day 2の段階で4個以上の胚が得られた1,202名の患者様を対象に、「Day 5の胚盤胞移植群」と「Day 3の初期胚移植群」に分けて成績を比較しました。
1回の新鮮胚移植における生児獲得率
胚盤胞移植群: 37.0%
初期胚移植群: 29.5%
1回の移植で見ると、たしかに胚盤胞移植のほうが高い成績を示しました。
1回の採卵で得られたすべての胚を使った「累積生児獲得率」
胚盤胞移植群: 58.9%
初期胚移植群: 58.4%
採卵1回あたりの累積で比較すると、両者にほとんど差がないという結果が出たのです。

つまり、胚盤胞移植は「1回の移植あたりの成績」を高めますが、「採卵1回あたりの最終的な生児獲得率(赤ちゃんを抱ける確率)」を必ずしも高めるとは限らないということです。
研究データを見るうえでの注意点
ただし、この研究結果をすべての方にそのまま当てはめることはできません。
この研究の対象となったのは、平均年齢約34歳で、Day 2に4個以上の胚が得られた「比較的予後が良好な患者様」です。研究の著者らも、胚が4個未満の患者様にはこの結果をそのまま適応できないと指摘しています。
特に、ご高齢の方や、採卵で得られる卵子・胚の数が少ない患者様の場合、「貴重な胚をすべて胚盤胞まで培養することが本当に最善なのか?」を慎重に考える必要があります。
不妊治療で最も大切なこと:治療の個別化
治療の目的は「胚盤胞を作ること」ではありません。
「限られた卵子・胚を最大限に活かし、赤ちゃんを授かる可能性を極限まで高めること」です。
当院では、初期胚移植と胚盤胞移植を一律に当てはめるのではなく、患者様のご年齢、卵巣予備能(AMH)、得られた胚の数や質に応じて、最も適した治療プランを個別化(オーダーメイド)して提案することが極めて重要だと考えています。
今回のBMJの研究は、現在「当たり前」のように行われている胚盤胞培養という選択肢について、改めて一人ひとりに合った最適なアプローチを見つめ直すきっかけとなる非常に重要なデータです。
ご自身の培養方針や移植プランについてお悩みや不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
【論文】
Cornelisse S, et al. Cumulative live birth rate of a blastocyst versus cleavage stage embryo transfer policy during in vitro fertilisation in women with a good prognosis: multicentre randomised controlled trial. BMJ.
可能性がございます。
お電話受付終了時間 月~金 18:30/土曜 17:30/祝日 13:30