LINEで初診予約
院長コラム

正常胚でも流産リスクは変わる?肥満と体外受精の妊娠成績の関係を検討した最新研究

正常胚でも流産リスクは変わる?肥満と体外受精の妊娠成績の関係を検討した最新研究
INDEX 目次

体外受精(IVF)におけるPGT-A(着床前染色体異数性検査)により、染色体が正常と判定された胚(正常胚)を移植することで、流産率の低下や妊娠率の向上が期待されています。しかし、正常胚を移植したとしても残念ながら流産に至ってしまうケースは存在し、その背景には「胚側の原因」だけでなく「母体(子宮内膜環境など)側の要因」が大きく関与している可能性があります。


今回は、生殖医療の国際的権威である学術誌『Fertility and Sterility』に掲載された大規模研究をもとに、「肥満(BMI)が正常胚移植後の妊娠成績や流産リスクに与える影響」について詳しく解説します。


【最新研究】14,990件のデータから見る「肥満と流産リスク」

本研究では、2019年から2024年までに9施設で行われた14,990件の初回単一正常胚(凍結胚)移植のデータを解析しています。


解析では、BMI 30以上を「肥満群」、BMI 30未満を「非肥満群」として比較を行いました。その結果、以下のことが明らかになりました。


流産リスクの上昇: 肥満群では、妊娠初期流産のリスクが19%増加

着床率: 両群間で大きな差は認められず

臨床成績の低下: 臨床妊娠率、継続妊娠率、生児獲得率は、いずれも肥満群で低下


論文のFigure 1に示されたデータからも、たとえ染色体が正常な胚であっても、母体側の因子が妊娠の維持(生児獲得まで至るか否か)に大きな影響を及ぼしていることが分かります。

1.統計学的に補正された高い信頼性

対象となった患者様の背景(Table 1)においては、年齢や治療施設、胚のグレード(見た目の評価)などの影響を統計学的に補正した上で解析が行われています。つまり、「単に年齢が高いから」「胚の質が悪いから」といった理由ではなく、肥満そのものがリスク因子となっている可能性が高いと言えます。


2.BMI(肥満度)が高くなるほど流産リスクも段階的に上昇

さらに本研究では、BMIの数値(度合い)ごとに細かく分析を行っています。

BMIの区分
流産リスクの変化(非肥満群との比較)
BMI 30~34.9
13%増加
BMI 35~39.9
20%増加
BMI 40以上
42%増加

(※論文内 Figure 3の解析より)


BMIが連続した値として解析された結果を見ても、BMIが高くなるにつれて流産リスクが徐々に上昇し、特にBMI 40を超えると上昇幅が顕著になることが示されています。

3.なぜ正常胚であっても流産リスクが上がるのか?

今回の研究における非常に重要なポイントは、「染色体異常の影響をあらかじめ排除した“正常胚”のみを対象にしている」という点です。


胚側の染色体に問題がないにもかかわらず肥満によって流産率が上がった背景には、以下のような母体側の生理的変化が影響していると考えられます。

  • 全身性の慢性炎症
  • インスリン抵抗性(代謝異常)
  • 着床を受け入れる子宮内膜環境の質の低下


「正常胚を移植すればすべての課題が解決する」というわけではなく、胚を受け止めて育てる母体側の環境(体調や代謝状態)も、妊娠の成立と維持において極めて重要であることが再認識された意義深い研究と言えます。


4.当院(両角レディースクリニック)からのアドバイス

今回の研究から得られる最も大切なメッセージは、「正常胚だからといって100%安心とは言い切れない」ということです。


もちろん、肥満傾向のある方であっても妊娠・出産される方はたくさんいらっしゃいます。過度に不安になったり、ご自身を責めたりする必要はまったくありません。


しかし、もし治療のスケジュールやご年齢的に時間的な余裕がある場合は、胚移植に向かう前のステップとして、以下のような取り組みを行うことも選択肢の一つです。

  • 無理のない範囲での体重管理
  • バランスの良い食生活への改善
  • 適度な運動習慣の導入


なお、この論文は「減量すれば確実に流産率が下がる」ということまで直接証明したものではありません。当院では、患者様一人ひとりのご年齢や卵巣予備能(AMH)、これまでの治療歴に寄り添いながら、ベストな移植のタイミングと体作りをご提案しています。気になることやご不安な点がございましたら、いつでもご相談ください。


第35回 妊娠に好ましい食生活|銀座の不妊治療|両角レディースクリニック

スライドPDFはこちら

morozumi-lc.com

og_img


【参考文献】
Whitehead C, Lefebvre K, Seli E.
Obesity is associated with an increased risk of early pregnancy loss after euploid frozen embryo transfer.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):265-274.

背景画像 背景画像
当日予約もお取りできる
可能性がございます。
03-5159-1101
 当日枠 月~金 14:00/土曜 12:00/祝日 10:00
お電話受付終了時間 月~金 18:30/土曜 17:30/祝日 13:30