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院長コラム

胚移植前に子宮内膜が薄くなると妊娠率は上がる?正常胚移植207例の研究から解説

胚移植前に子宮内膜が薄くなると妊娠率は上がる?正常胚移植207例の研究から解説
INDEX 目次

凍結融解胚移植では、子宮内膜の厚さが妊娠率に関係することが知られています。一方、排卵後から胚移植までの間に子宮内膜が薄くなる現象を「エンドメトリアル・コンパクション(子宮内膜の菲薄化)」と呼び、これが着床に適した子宮内膜の指標になるのではないかと考えられてきました。

では、胚移植前に子宮内膜が薄くなると、妊娠率は高くなるのでしょうか。

今回、生殖医学の専門誌『Human Reproduction』に、子宮内膜が薄くなることと妊娠率の関係を調べた前向き研究が掲載されました。

正常胚移植207例を対象とした研究

今回の研究は、スペインの6施設で実施され、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)により染色体正常と判定された胚盤胞を、修正自然周期で1個移植した207人を対象としています。

hCG投与日と胚移植当日に経腟超音波(エコー)検査で子宮内膜の厚さを測定し、厚さが5%以上減少した場合を「コンパクションあり」と定義しました。

Table 1では、患者背景が比較されています。

対象者の平均年齢は39.1歳で、コンパクションが認められた58人と、認められなかった149人の間に、年齢やBMI、卵子の由来などの明確な違いはありませんでした。

子宮内膜が薄くなっても妊娠継続率に差はなかった

Table 2では、今回の研究で最も重要な妊娠成績が示されています。

妊娠10週時点での妊娠継続率は、以下の結果となりました。

- コンパクションあり:50.0%

- コンパクションなし:53.7%

両群の間に統計学的な有意差は認められませんでした。

つまり、胚移植前に子宮内膜が薄くなったからといって、妊娠率が高くなるわけではないことが示されました。

子宮内膜の減少率が大きくても妊娠率との関連は認められなかった

さらにTable 3では、年齢、BMI、流産歴、出産歴、卵子の由来などを調整した解析が行われています。

その結果、コンパクションの有無と妊娠継続率との間に、有意な関連は認められませんでした。

また、子宮内膜の減少率を10%以上、15%以上とした場合でも、結果は変わりませんでした。

Table 4では、臨床妊娠率、化学流産率、妊娠初期の流産率について比較していますが、いずれもコンパクションの有無による有意差は認められませんでした。

これらの結果から、子宮内膜がどの程度薄くなったかという変化だけでは、胚移植後の妊娠成績を予測することは難しいと考えられます。

胚移植前の子宮内膜の厚さはどのように変化したのか

興味深いことに、コンパクションが認められた群では、hCG投与日の子宮内膜は平均9.55mmと厚かったものの、胚移植当日には7.91mmまで薄くなっていました。

一方、コンパクションが認められなかった群では、8.39mmから9.75mmへと厚くなっていました。

それでも、妊娠継続率に有意な差は認められませんでした。

今回の研究で重要なのは、胚移植前に子宮内膜が薄くなること自体を、良い兆候とも悪い兆候とも判断できないという点です。

過去には、コンパクションが妊娠率の改善と関連するという報告もありました。しかし、今回のように染色体正常胚を用い、経腟超音波で測定方法を統一した前向き研究では、その関係は確認されませんでした。

今回の研究結果を解釈する際の注意点

ただし、今回の研究結果がすべての患者様に当てはまるわけではありません。

今回の研究では、hCG投与時の子宮内膜が7mm未満の患者様や、反復着床不全の患者様などは対象から除外されています。

また、主な評価項目は妊娠10週時点の妊娠継続率であり、実際の出生率については十分なデータがありませんでした。

そのため、子宮内膜がもともと薄い方や、良好胚を繰り返し移植しても着床しない方については、今後さらなる研究が必要です。

まとめ 子宮内膜の厚さの変化だけで胚移植の可否を判断しないことが大切

今回の研究では、胚移植前に子宮内膜が薄くなる「エンドメトリアル・コンパクション」と妊娠継続率との間に、有意な関連は認められませんでした。

この結果から、胚移植前に子宮内膜が薄くなったという理由だけで、移植を中止したり、治療方法を変更したりする必要性は示されませんでした。 

子宮内膜の厚さの変化だけにとらわれず、排卵の状態や子宮内膜の発育、胚の状態などを総合的に判断することが大切だと考えます。

不妊治療や体外受精における胚移植では、一つの検査結果だけではなく、患者様それぞれの状態に合わせて治療方針を検討することが重要です。

参考文献

Esperanza De la Torre Pérez, Juan Carlos Castillo-Farfán, Maria Concepción Carratalá-Munuera, et al.Endometrial compaction and ongoing pregnancy in modified natural cycle frozen euploid embryo transfer: a prospective multicentre cohort study with standardized transvaginal ultrasound assessment.*Human Reproduction*. 2026. Advance online publication.DOI:10.1093/humrep/deag165

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