LINEで初診予約
院長コラム

PGT-Aで正常胚が複数あるとき、どの胚を選ぶ? テロメアを使った新しい胚評価法(Teloscore)

PGT-Aで正常胚が複数あるとき、どの胚を選ぶ? テロメアを使った新しい胚評価法(Teloscore)
INDEX 目次

近年、PGT-A(着床前染色体異数性検査)を受ける患者様が増えており、当院(東京都中央区・両角レディースクリニック)でもご質問を受ける機会が多くなりました。


PGT-Aを行うことで染色体数が正常な胚(正常胚)を選択できますが、「正常胚を移植すれば必ず着床する」というわけではありません


そのため、複数の正常胚が得られた場合に「どの胚から優先して移植すればよいのか?」は、現在の生殖医療における非常に重要な課題となっています。


今回は、アメリカの医学雑誌『Fertility and Sterility』(2026年)に掲載された、胚の「テロメア」を利用して着床しやすさを予測する新しい胚評価法の論文をご紹介します。


胚を傷つけない新しい評価法「Teloscore」とは?

「テロメア」は、染色体の末端に存在し、遺伝情報を保護する重要な役割を持っています。受精後の初期胚では、一度短くなったテロメアが「胚盤胞」へと成長する過程で再び伸びていく(再延長する)という特徴があります。


研究チームは、この「テロメアの回復力」が胚の健全な発育能力を反映している点に着目しました。


通常のPGT-Aで得られたNGS(次世代シーケンサー)データを再解析し、テロメアの状態を数値化したものが「Teloscore(テロスコア)」という新しい指標です。


この手法の最大のメリットは、「胚をもう一度生検したり、新たな検査を追加したりする必要がない」点にあります。すでに手元にあるPGT-Aのデータを解析するだけなので、大切な胚に余計な負担をかけることがありません。


研究データが示す「Teloscore」と着床率の関係

本研究では、1,451組の夫婦から得られた5,251個の胚盤胞を解析し、その中から正常胚を1個移植した症例について、Teloscoreと着床率の関連が調べられました。


対象となった女性の平均年齢は35.5歳72.7%がDay5(5日目)胚盤胞、27.3%がDay6(6日目)胚盤胞です。


1. スコアが高い胚ほど、着床率が高い傾向

解析の結果、Teloscoreの数値によって着床率に明確な差が見られました。

  • Teloscore 0~4: 着床率 36.8%
  • Teloscore 4~7: 着床率 63.3%
  • Teloscore 7~10: 着床率 64.6%
  • Teloscore 10~13: 着床率 65.7%


このように、同じ「正常胚」であっても、テロメアの状態によって着床する力に違いがある可能性が示されました。

2. 見た目(見た目のグレード)を補完する効果

従来の「胚盤胞の見た目(見た目のグレード/形態評価)」とTeloscoreを組み合わせた解析では、「見た目のグレードが良く、さらにTeloscoreが高い胚」が着床率67.2%と最も良好な結果でした。


さらに興味深いのは、見た目のグレードがやや劣る胚であっても、Teloscoreが高ければ、見た目の良い低Teloscore胚と同等の着床率を示したことです。

外見のグレードだけでは分からない胚の潜在的な発育能力を、テロメアの情報が補ってくれる可能性を示しています。

3. 着床に関わる「独立した予測因子」

年齢、見た目のグレード、Day5かDay6か、女性のBMIなどを考慮して解析しても、Teloscoreは着床率と独立して関連していました。

Teloscoreが「1」上昇するごとに着床率のオッズは約1.10倍となり、「Day5胚盤胞であること」と並んで重要な予測因子であることが分かりました。(※なお、ミトコンドリアDNA量を示す「Mitoscore」は、正常胚の着床予測には有用ではありませんでした。)

現時点での課題とこれからの展望

非常に魅力的なデータですが、現段階で「Teloscoreだけで移植する胚を完全に決定できる」わけではありません。


予測モデルとしての正確性を示す指標(AUC)は0.668と中等度であり、論文の著者らも「Teloscoreが低いという理由だけで、その胚を移植対象から除外すべきではない」と明確に述べています。また、今回の研究は1つの施設で行われた後ろ向き研究であるため、今後はより多くの施設での検証が必要です。


しかしながら、PGT-Aで正常胚を選ぶだけでなく、その正常胚の中から「より着床する可能性が高い胚」を追加負担なしで選べるようになることは、今後の胚選択を大きく進歩させる可能性があります。


当院でも、こうした最新の知見・技術に常に注目し、患者様にとって最善の医療選択肢をご提案できるよう努めてまいります。PGT-Aや胚選択についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


【参考文献】
Lo WC, Cheng EH, Shih HH, et al.
Postfertilization telomere marker testing in human embryos: a pilot study of a novel embryo evaluation assay.
Fertility and Sterility. 2026;126(2):334-344.

▼PGT-A関連コラム


PGT-Aで正常胚を選んでも年齢の影響は残る?「染色体異常と母体の加齢」 |銀座の不妊治療|両角レディースクリニック

近年、日本でもPGT-A(着床前遺伝学的検査)が普及し、染色体異常のない「正常胚(正倍数性胚)」を選択して移植できるようになりました。そのため、患者様から「正常胚さえ見つかれば、年齢による妊娠率の低下や流産のリスクはなくなるのではないか」と...

morozumi-lc.com

og_img

反復流産患者にPGT-Aは本当に有効なのか―3回のeuploid胚移植後累積生児率96.9% |銀座の不妊治療|両角レディースクリニック

反復流産患者さんに対して、「PGT-Aは本当に意味があるのか」という議論は現在も続いています。特に、「流産の原因は胚側なのか、それとも母体側なのか」という問題は、反復流産診療の中心テーマの一つです。今回紹介する論文は、「euploid胚だけ...

morozumi-lc.com

og_img

PGT-Aに関して大切なこと |銀座の不妊治療|両角レディースクリニック

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、現在も世界的に議論が続いている技術です。今回の保険診療の対象とならなかったことが示すように、国や学会、厚生労働省も「自信をもって広く推奨する」という段階には至っていません。つまり、確固たるエビデンス...

morozumi-lc.com

og_img


背景画像 背景画像
当日予約もお取りできる
可能性がございます。
03-5159-1101
 当日枠 月~金 14:00/土曜 12:00/祝日 10:00
お電話受付終了時間 月~金 18:30/土曜 17:30/祝日 13:30